引き続き、美術家の風見佐知子さんを撮影させていただいています。

撮影前、波と戯れるように舞う揚羽蝶が目にとまりました。近寄ろうとすると少し距離を置くのだけれど、何故だかそれは飛び去ろうとはしませんでした。まるで此方の様子を窺っているかのように。

偶然を装い常世に現れる、ともすれば見過ごしてしまいそうな些細な兆候たち。しかし、撮影者がその断片を抱いたまま撮影に臨めば、それらは当然のように画面に写り込んでくる。

写真を撮るということは、この世界に散りばめられた自分にしか見えないサインを拾い集めていく行為なのだな、僕はあらためてそう感じたのでした。